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『第三世界の長井』 時間、長井の回想


タイムライン

11日+αの出来事

 『第三世界の長井』の主軸となる帽子の少年の視点では、基本的に時系列順に物語が進行する。順に出来事を列挙すれば次の表のようになる。

日A 帽子の少年と長井・博士とのファーストコンタクト
UFO出現
(長井と博士、夕食中に諍い)
日B (学校、長井と級友の間でドラえもんの秘密道具談義があった)
昨日のUFOが学生の間で話題に
昨夜の夕食の結果、博士が少し大きめの石を捨てたと判明
飛ビ跳ネサセ星人戦。長井は逃亡
夜、帽子の少年、長井とのコンタクト結果を仲間に報告
(深夜、博士がオープンゲットに挑戦)
日C オタ丸ら級友登場。昨日の秘密道具談義が蒸し返される
博士が昨夜来、瀕死だと判明。さらに雷を受ける
博士により新たな侵略宇宙人の存在が発覚
少し大きめの石の復活
空白期間?
日D 夜、帽子の少年と仲間でスーパーヒーロー改造の設定が話題に。
下記と同日か?
(深夜、長井が改造される)
日E 爆破星人戦。長井は昨夜の改造手術により初変身
爆破星人によりヘリ墜落事故発生
日F ヘリ墜落事故が話題に。事故現場に長井らが集まる
クッ付カセル星人戦。クッ付カセル星人は警官から逃走
(帽子の少年はこれ以上の事態との関係を拒否)
空白期間?
日G (警官隊に追われるクッ付カセル星人は所沢市で行方不明に)
日H (クッ付カセル星人逃走中)
日I クッ付カセル星人の行方不明から丸二日が経過
夜、帽子の少年が飛行実験中の長井と遭遇
ラーメン星人戦
日J クッ付カセル星人が逃亡先の山中で包囲される
前日長井の落としたぬくもり棒を帽子の少年が返却
うるる登場
火山噴火星人戦
うるると長井、翌日再会の約束
クッ付カセル星人は包囲網を突破
日K うるると長井の買い物
衝撃星人戦
長井は強制転送される

 描写がないものの、セリフ等から演繹的に「あった」と推定される出来事はカッコで囲った。
 大半の日にはどこかに前日への言及があるため連日の出来事だと分かるが、図C〜D間・F〜G間には言及がないため何日が経過したのか不明である。たとえば日Eにおける博士の「昨日の夜お前を改造したから。」[1-101]という発言から、長井が改造されたのが日Eの前夜つまり日Dなのは間違いないが、それが日Cの翌日かどうかはそれを示すセリフが一切ないので定かでない。もっとも他の日が連続している以上そう何事もない日々が続いているとは考えにくく、空白期間は長くはない/存在しないと考えるのが自然かもしれない。
 なお便宜上図中の日Dに帽子の少年らの会議を書いてはいるが、これもいつ行なわれたのか正確でなく、空白期間にも属しうる。ともかく作品中で描写されている日数は11となる。

 日Kは公園に一般人が多い様子やヒーローショーが実際に予定されている点から、休日と思われる。それ以外に劇中で昼間の描写のある日(日A〜C・日E〜F・日I〜J)は、学校の下校中と見られる描写、または制服姿の学生の多さから平日と考えられるが、これらから曜日や空白期間の有無を特定する事は難しい。まず日Kは曜日に関わらない国民の祝日かもしれないし、長井らが通う学校も土曜休日制を採っているかどうか分からないからだ。
 ただし日Jにおいて火山噴火星人によるポポカテペトル火山の噴火が「メキシコ時間21時49分」[2-94]と書かれており、これは日本時間では午後0時49分にあたる。この時間帯に長井やオタ丸らが学校から帰宅中である事からは、この日Jはいわゆる半ドン(午後休)の土曜日だと考え得るし、となれば翌日Kは日曜日だという事になるだろう。日K=日曜日を起点とし、かつ空白期間を当面無視してさかのぼれば、日Dが再び日曜日、日Aが木曜日と、11日間の(ちょうど学生の登校日と日曜日が被らない)カレンダーが完成する。逆に2度目の空白期間をカウントする場合は、この中に日曜日を入る必要があり、最短でも3日間が必要となる。
 もっとも半ドン=土曜日と決めつけるのは乱暴であるし、国民の祝日も考慮すべきであろうから、やはり仮定の域を出ないことは注意されたい。

一週間問題

 劇中で解決していない問題の一つに、「長井がいつアメリカから日本に来たか」がある。
 ラーメン星人戦の直前、長井は父の死を「フン…アレは一週間以上も前の事ダッタ。 /…/ この俺がアメリカで対空技の練習をしていると…」[2-39]と回想している。これに帽子の少年は「待てって… / お前いつ日本に来たんだよ。 / だってお前…」[2-40,41]と不審に感じているが、それもその筈でこの日は彼が長井と出会って8日(以上)後になるのである(前図参照)。
 長井の発言「一週間以上も前」は正確な日にちを示していないので拡大解釈すれば何日間とでも言えるが、常識的には二週間(14日)を越えることはなく(長井の人格は歪められていて頓狂な言動も多いが、こうした点ではおおむね常識的である)せいぜい10日前後と考えるのが妥当だろう。仮に長井の父の死を10日前とするなら、葬式(回想中で長井とビルが喪服を着ている[2-39])当日〜2日後の間には日本に着いていなければならない計算となる。

 不可能な日程ではないにしろ、長井の日本のクラスメートとの親交が数日で温められたというのはいかにも不自然だろう。つけ加えるなら、帽子の少年が最初に長井と逢う直前、音那は「ようやく… / 彼に会う気になったのか?」[1-7]と言っている。帽子の少年が本来もっと早く長井とコンタクトを取れたとすれば、長井はさらに前に日本に着いていなければならない。
 長井がアメリカと日本をたびたび行き来していたとすればこの問題はある程度解決する(Eアンカー「設定32 主人公はアメリカ人でしたって事で」[1-68]は常にアメリカ在住を示すとは限らない)が、だとしても不自然な行動には違いなくその理由が不明なままである。
 長井のアメリカと日本を結ぶ時間的経緯には、まだ明かされていない謎があると考えて良いだろう。

回想時間

 長井がアメリカ生活を回想する場面は三度ある。初めは前記のジャックの訃報と葬儀の件[2-39,40]。次は帽子の少年が「…俺は泉の精かよ。」[2-72]と何気なく例えたことに反応した回想である。それは「そう…あれは少し前の事ダッタゼ…」[2-72]という程度の過去だという。三度目の回想は、うるるの資金の調達について「あれは昔ビルの兄貴が金に困っておった時の事ダゼ…」[2-115]と思い出した時だ。
 この二度目と三度目の回想は、ビルが彼女に二股をかけられた事が分かってから再び騙される一連のストーリーになっており、ほんの数日の間の出来事だと思われる。とすれば長井が事件をそれぞれ「少し前」「昔」と離れた時期(それも順序が逆になる)と位置づけているのは、些細な事ではあるが奇妙な矛盾だと言えるだろう。
 しかも長井は三度目の回想を遮られた時「ソ…ダガこのままでは春の日差しの様な負債者ビルの兄貴が…」[2-117]とまさに現在の出来事のように語っているのである。過去の回想を現在時間のように表現するのはままある事だが(この場合「この回想を今このままで留めてはビルの兄貴のストーリーが完結しない」といった意味にもとれる)、この時うるるは「こ…このままって何よ…過去の話でしょうが。」[2-117]と不審に感じており、作品演出上でも不自然な発言として表現されているようだ。

 複数の時間軸が前後して複雑になったので、簡潔に表に纏めておく。

回想の内容相対的な時間
ジャックの訃報と葬儀日Iから「一週間以上も前」
二股をかけられたビル、泉の精の秘密日Jから「少し前」
彼女とよりを戻すビル、ビルの借金日Kから「昔」
日Kの時点で「このままでは」ビルの借金が返せない?

 長井の説明が全て字義通りでしかも正しいとするなら、この作品世界でのアメリカの時間の進み方は、帽子の少年らのいる日本のそれとは異なり一定方向に進まず、しばしば前後していると疑わねばならないだろう。
 二度目・三度目の連続した回想が「少し前」「昔」の順という矛盾をささいな形容の齟齬として目をつぶるとしても、「本来日本にいるべき『一週間以上前』にアメリカにいた」「本来過去のはずのビルの借金苦が現在として語られている」という二つの疑問は揺るがせにできない。この二点は作中でも帽子の少年やうるるによって怪しまれた問題であり、たとえば長井の単なる勘違いなどではなく、物語上の意味を持つ問題だと考えられるからだ。
 そしてこの問題が超自然的な現象なしに解決しないことも明らかだ。時間の異常、あるいは空間の異常。仮にこの世界の「アメリカ」が異なる時間の流れをもつなら、あるいは帽子の少年の常識を大きく外れた近距離──町内のすぐそこ等にあったとすれば、これらの矛盾は解決するだろう。しかしそこまで巨大な異常に(テクストの差異を観測できるはずの)帽子の少年が気付いていないのは不自然でもある。
 では問題の主従を逆転して、もっと狭い範囲で、しかし事象の改変の中心である長井の周辺に異常があったとするとどうか? つまり本人も気付かないままに、長井だけが時間または距離を無視して行動しているという可能性だ。これは矛盾点の説明としてもっともらしいが、しかし描写される限り長井はまったく時空間を超越していない(衝撃星人戦時に瀕死になった長井は空間を転送されるが[2-148]、これは博士の技術であり問題が異なる)という点で、多分に空想的だ。

アメリカの謎

 ここで空想的な説に飛びつくよりも先に、この謎めいた「アメリカ」についてより詳しく検証する必要があるだろう。
 長井の回想による限り、このアメリカは映像的には、ジャングルジム、ぶらんこ、分別式ごみ箱、自動販売機、遊歩道、街灯、ベンチ、鉄棒、滑り台を有する、単純に言って公園としか呼べない場所しか登場していない。
 なぜ長井はたびたび(常に?)この公園にいるのか? 公園なのにうどんらしき物を立ち食いしている[2-117]のはなぜか?(ラーメン星人戦時にどこからか出したうどんを投げつけた技「ヤング・グラフィティ。」[2-48]と関係あるのだろうか?) この公園で馬謖が十字架に縛られ長井にメッタ斬りにされていた[2-73]のは(Eアンカーの指示[2-66]とはいえ)どんな理由があり、またなぜその行為は問題にならないのか? この公園には不審な点が多い。「公園の外」がぽっかりと空白として描かれているのも(漫画表現としては珍しく無いとはいえ)徹底して背景が緻密に描写されるこの作品では、ひとつの疑問点だろう。

 これらから導かれる当然の疑惑として、長井の回想は創作(嘘)なのではないかと感じられるかもしれない。
 長井の創作した描写なのだとすれば、公園といういい加減なロケーションもその外側が空白なのも(外側がどんな場所か、長井の描写や想像が追いついていないとして)説明はつく。またビルという男の立場が最初の「近所の知人 ビル」[2-39]とそっけない解説から、「(…)この俺を導く人生の先輩のうそ空手家ビルに(…)」[2-72]と急に兄貴分めいた存在に変わっているのも、いわば「一定しない証言」で長井の嘘を示すと言えるだろうか。
 実際、長井の回想は時に会話のつじつまが合っていない。「二股かまされ地獄見た。」[2-73]と女の怖さを説くビルに、長井は「そ…ビルの兄貴 泉の精についてですが…」[2-73]と話の流れと無関係に「泉の精」を持ち出し(たしかにビルは泉の精の情報を持っていたが、長井はその事をどうして知ったのか?)、ビルも「俺がその問題の泉に鉄の斧を落としたら… / 誰かの死体が浮いてきた。 /…/ それだけだ。」[2-74]と答えている。まだ話に出てきていない「その問題の泉」とは何なのか、一度も「泉の精」が登場していないのになぜ話が終わるのか、木こりとも思えないビルがなぜ鉄の斧を泉に落とし、死体は誰でどうなったのか、全て夢の中の会話のように脈絡がない。これは普段の長井の言動とも共通すると言えるだろう。
 またビルの本名も「ウィリアム・P・リコレクト」とされ[2-73]リコレクトrecollectとは「思い出す」の意でアメリカ人の姓として不自然なのと同時に、回想にのみ登場する人物の姓としてのあからさまな作為が感じられる(念のため書くなら、一般にウィリアムの愛称はビルでありその点でおかしな事はない)。ミドルネームの「P」が例えば「偽物phony」のPだとは言えないだろうか?
 最も重要だろう問題として、長井の顔がある。火山噴火星人戦直前(最初の図では日J)を境に、うるるとの対話によって長井の顔はシャープな形態に変化し固定された[2-87]。しかし翌日の日Kにおいて長井のした(三度目の)回想の中で長井の顔は日J以降のシャープな形態になっているのだ。この回想が日Jより以前ならば、長井の顔も昔の顔で回想されるべきではないのか。

 このように多くの点で長井の回想は不自然で、創作/嘘だと考える根拠になるだろう。
 しかしそれはある点において否定される。ポイントは二度目の回想冒頭で長井が「この俺が馬謖をメッタ斬りにしていると…」[2-73]としている事で、これはEアンカーの「設定160 主人公は以前泣いて馬謖をメッタ斬りにした」[2-66]の反映である。考え得るかぎり、Eアンカーによる設定は想像ではなく事実を書き換えるものだ(どんな設定であれ、空想を書き換えて終わりではお粗末に過ぎるだろう)。すなわち長井のこの回想も事実に基づいているというひとつの証拠になる。
 また、前記の〈長井の顔の変遷と時系列の矛盾〉にも、ひとつの解答がある。それはアンカーによる事実の上書きが遡及的に起こるという考え方だ。たとえば、長井の学友である長い髪の少女がうるるへと変化した時を思い出されたい。帽子の少年がうるる=「髪の長い女」の事を彼女の友人達に問うと、彼女たちは「え? 誰の事?」「さあ。」[2-70]と完全に少女の事を忘却していた。記録の類が残っているとも考えられないので、周囲の記憶のみならず存在自体が「なかったこと」になっていると考えるべきだろう。長い髪の少女は最初から存在せず、博士の娘のうるるという人物が昔から存在していたことになっているのだ。読者と帽子の少年は情報の書き換えを知覚できるため、この変異を変異としてとらえられるにすぎない。
 長井の顔の変化もこれと同様に、うるるとの対話以前の劇画的な顔は「なかったこと」になり、最初からシャープな造形の顔だった事に書き換えられた……と考え得る。そうであれば、長井の回想の中でも書き換わった「最初からの顔」で登場するのはごく自然である。
 他にもいい加減なロケーション、公園の描写や会話のつじつまのおかしさ等、現実問題として不自然な部分は、しかし長井による主観的な回想だという事が単純にその説明になってもいるだろう。長井はあの通り奇矯な発言の多い男で、いわば「信頼できない語り手」である長井の回想なら(実際に起きた事実と異なり)いいかげんに描写されて不思議はないのだ。むしろビルという男が女に騙され金を貢いでいる一連の事態は、そんな長井の空想/嘘としては不自然なリアリティがあり、事実をありのままにアウトプットした結果と見る事もできるだろう。

 このように、「設定160 主人公は以前泣いて馬謖をメッタ斬りにした」[2-66]がEアンカーにあり、Eアンカーは常に「事実」となるという作品世界の動かしがたい法則を起点にして展開するなら、アメリカの回想は長井の描写の不足や歪曲が入り交じってはいるが、しかし基本的には事実に基づく回想だと言えるだろう。
 もちろん最も効果的な嘘の吐き方とは「真実に嘘をまぶす事」であり、これらの回想の中に手際よく長井の嘘/創作が(意識的にせよ無意識的にせよ)隠されている可能性は否定できない。話を元に戻せば、回想のたびに前後する時間の問題が棚上げになったままでもある。

 そこで再度「Eアンカーの効果が遡及的に起こる」点に目を向けるなら、長井の回想の時間軸が前後するのも、やはりEアンカーの時制が(現実と、あるいは別のアンカーと)何らかの衝突を起こした結果と言えるのではないか。
 本来長井は日本に暮らしていたが、Eアンカーによって「一週間以上も前」までアメリカにいた「という事になった」、仮の例を挙げるならそういう事である。これは「設定32 主人公はアメリカ人でしたって事で」[1-68]の反映とも言えるだろう。
 Eアンカーの万能性に対して乱暴な結果に見えるかもしれないが、本来Eアンカーで起こる結果はえてして乱暴なものだ。たとえば「設定133 主人公の腕には腕時計型通信機がある」[1-124]では、1コマ前まで何も着けていなかった長井の左手首にまったく唐突に腕時計型通信機が出現した[1-95]。帽子の少年はこれに気付いて「あ…あれ? / お前そんなの付けてた?」[1-95]と反応しているが、言うまでもなくこれはEアンカーによる設定の改変に気付ける特質があるからで、帽子の少年でなく一般人ならば「最初から付けていた」と感じていて、疑問にすら思わなかっただろう。
 むろんEアンカーが回想時期の混乱の原因としても、混乱を招いた設定自体はまだ明らかになっていないのだから、これは推測にすぎない。だが現時点では諸設定と矛盾せずに「手持ちの材料」で説明のつく中では現実的な解だと言える筈だ。