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『第三世界の長井』 背景から


背景世界

あの街の地政学

 『第三世界の長井』で描写される(文字どおりの意味の)背景に注目すると、「複数回登場する場所」や特徴的な地域がある事に気付くだろう。大きく分けるなら(あくまで独自の分類だが)このようになる。

商店街引用:ながいけん『第三世界の長井(1)』p.34, 小学館, 2013
  • 帽子の少年による長井との初対話〜博士の登場[1-16]
  • UFOの出現[1-32]
  • 博士が雷を受ける[1-80]
  • クッ付カセル星人登場[1-138]〜父ジャック初登場[1-141]〜音那再登場[1-158]
やや無秩序に看板やのぼりが軒を連ねる。逆四角錐(?)状の街灯[1-34]が特徴。端点には駅出入口があり、ヘリの墜落した現場も近い[1-123]
準商店街引用:ながいけん『第三世界の長井(2)』p.68, 小学館, 2013
  • 帽子の少年と音那の最初の邂逅[1-7]
  • オタ丸・関羽・張飛ら登場[1-72]
  • 帽子の少年の買い出し[2-28]
  • 長井に帽子の少年からぬくもり棒の返還[2-70]
  • うるる登場[2-76]
カフェ[1-9]や古書店[1-7]、寿司屋[1-74]などが見られるが、商店街ほど賑やかではなく住居と混在している様相。U字型に2個並んだ街灯[1-73]が特徴的。
住宅街引用:ながいけん『第三世界の長井(1)』p.58, 小学館, 2013
  • 飛ビ跳ネサセ星人戦[1-40]
  • 爆破星人戦[1-93]
  • ラーメン星人戦[2-30]
  • 火山噴火星人戦[2-81]
マンションやアパート、一戸建てが併存する地域。閑静で特に通学時間帯以外の人通りは少ない。
駅ビル引用:ながいけん『第三世界の長井(1)』p.91, 小学館, 2013
  • 物語冒頭[1-3]
  • 長井がサンタ・ルチアを熱唱しながら登場[1-92]
  • 長井とうるるの服の買い出し[2-107]
駅に接続され屋外に張り出したペデストリアンデッキ(歩行者回廊)が特徴。正面には店舗の並びが見える。しばしば手すりには帽子の少年が腰かけている[1-3,91,2-106]
公園引用:ながいけん『第三世界の長井(2)』p.108, 小学館, 2013
  • 長井とうるるのミーティング[2-108]〜衝撃星人戦[2-127]
緑の豊かな広い公園。フランクフルトの出店(?)やヒーローショーが催されるなど[2-125]、規模の大きさが推測される。

 その他に建物単体や屋内しか描写されていない場所として以下がある。

  • 喫茶店の中[1-11]
  • 長井らが通う学校[1-36,68,2-69]
  • 帽子の少年と仲間の集合する部屋[1-59,88,2-98]
  • 帽子の少年の住むマンション(?)[2-26,66]
  • 音那と仲間の集合場所[2-67,157]

 これらを劇中の登場順に並べれば、帽子の少年の「移動経路」が明らかになるだろう。

  • 準商店街 → 商店街[1-7〜17]
  • 学校 → 住宅街[1-36〜40]
  • 学校 → 準商店街 → 商店街/駅[1-68〜79]
  • 駅ビル → 住宅街[1-91〜94]
  • 駅 → 商店街[1-123〜138]
  • 帽子の少年の住むマンション → 準商店街 → 住宅街 → 商店街[2-28〜60]
  • 準商店街 → 学校 → 準商店街 → 住宅街[2-68〜81]
  • 駅ビル → 公園[2-106〜108]

 この移動経路は場面転換を経由する場合が多く、シームレスな移動を意味しないため、矢印で繋がった地域が単純に隣接しているとは言い切れない。しかし総合的に見て、端点となる事の多い学校・住宅街・駅(商店街)とが三角形構図を描いていると考えてあながち的外れではないだろう。
 彼ら登場人物の行動範囲は今のところ非常に狭く、歩いて楽に到達できる程度の範囲でしか展開していない。

 これだけが世界の全てでは無論あるまい。この他にセリフ等で言及のみされている場所は、以下がある。

  • アメリカ[1-13]
  • 博士の住むアパート(国際人類宇宙悲しみ研究所)[1-39]
  • 近所の工場[1-40]
  • ロッキー山脈[1-71]
  • 移動要塞ドングリ・フリーダム[1-95]
  • 所沢市[2-27]
  • 埼玉県[2-28]
  • 羽田[2-37]
  • 鹿児島[2-37]
  • メキシコ[2-94]
  • ポポカテペトル火山[2-94]
  • ギリシャ[2-95]

 長井の愛唱歌『サンタ・ルチア』[1-61]の存在から、歌詞にあるボルゴ・サンタ・ルチア(イタリア)もこれに加えて良いだろうか。
 注意すべきは、セリフに登場しているからといって実在するとは限らない点である。現実の改変がたやすく行なわれるこの物語においては、実際に(特に帽子の少年の視点から)観測されるまでその存在が確かなものとは言えない。

聖地田無

 『第三世界の長井』の舞台、少なくともその多くは(東京都西東京市)田無町がモデルとなっている。これは店構えの中に「TANASHI」の文字がある[1-92]事からの類推だが、事実その店を含め、田無町と酷似した風景がある以上そう見当違いでもあるまい。

Googleストリートビュー 35.728332度,139.538521度より

引用:ながいけん『第三世界の長井(1)』p.92およびp.9, 小学館, 2013

 このカフェは物語冒頭で帽子の少年が音那と出会った背景に、また爆破星人戦直前に帽子の少年が腰かける手すりの前に描かれている。
 その手すりのある(先述の分類では「駅ビル」とした)歩行者回廊は、西武新宿線田無駅と直結しているアスタ専門店街 / リヴィン田無店の歩行者回廊に原型を見出す事ができる。

Googleストリートビュー 35.728332度,139.538521度より

 この角度からは、動物の角のごとく奇妙なカーブをした手すりと、二度の急カーブを描く街灯がはっきりと確認できる。上階にはバンダレコードリヴィン田無店の黄色いのぼりも点々と見えるだろう。

引用:ながいけん『第三世界の長井(1)』p.3およびp.91, 小学館, 2013(ともに強調効果「3N」筆者)

 奥にあるりそな銀行や田無柳麺の看板も注目したい。おそらく物語冒頭で帽子の少年が座っていたのは、このストリートビューでの画像中央部だろう。
 同じ画像からは田無駅への北口出入口も見えるが、クッ付カセル星人戦前にオタ丸らが向かった[1-79]先は形状からしてリヴィン田無の正面入口がより近いだろうか。その後に音那が現われた背景[1-158,2-7,16等]にたびたび描かれているのは、メガネのマエダ田無店である。

引用:ながいけん『第三世界の長井(1)』p.79, 小学館, 2013Googleストリートビュー 35.727755度,139.54043度より

引用:ながいけん『第三世界の長井(2)』p.16, 小学館, 2013Googleストリートビュー 35.727625度,139.539492度より

 衝撃星人戦の舞台となった公園も、断言できるほどではないがその広さと植生・風景の類似から、田無駅から徒歩15分程度の場所にある小金井公園と考えられる。

差異空間

 誤解してはならないが、こうした一致点があるにしても漫画の舞台である田無と「現実の田無」、つまりノンフィクションとしての田無町は異なる。現に駅前から劇中の商店街に道は続いていないし、ヘリが激突した駅前の高層ビルは田無ではなくひばりが丘駅前にある

引用:ながいけん『第三世界の長井(1)』p.115, 小学館, 2013 / Googleストリートビュー 35.751335度,139.545487度より

 画像は角度の差が大きいが、近景も含めて問題の高層ビルがひばりが丘の高層タワーマンションHIBARI TOWERと酷似していることに異論はあるまい。
 このビルは西武池袋線ひばりヶ丘駅と近接しており、カマボコ状の駅舎や、駅前のパチスロやすだひばりヶ丘店の特徴的な出入口とオーロラビジョンも作中でよく似た場所が確認できる。

Googleストリートビュー 35.751446度,139.545225度より
引用:ながいけん『第三世界の長井(1)』p.120, 小学館, 2013

 ここで奇妙な矛盾が生まれる。登場人物たちが利用する「駅」は、田無駅とひばりが丘駅の両方の外観を持っているのである(劇中で駅の名前が呼ばれた事は無いが、以後便宜上それぞれを田無駅・ひばりが丘駅と呼称する。他の施設についても同様とする)。
 劇中の「駅」をはそもそも2つあって、彼らは普段は田無駅を利用し、墜落事故現場の見物の時[1-125]だけひばりが丘駅に来た──という見方はできるだろうか? しかし同じ墜落現場見物の際[1-125]、うるるが現れたのは先述したメガネのマエダ田無店の前であり[2-16]、現実においてその距離は約3.1kmもある。やはりこの駅は〈田無駅とひばりが丘駅の外観を同時に備える〉と考えた方が良いだろう。
 似た例として、帽子の少年が腰かける手すりの向かい──つまり駅ビルの店舗群──にはフジカフェがある[1-92]が、これとは別の場所(準商店街)にもそっくり同じ店構えのフジカフェが存在する[1-9]。これは店舗前が警察の規制テープで封鎖されている[1-123]かと思えば、その様子が見られなくもある[1-158]メガネのマエダにも言える。
 これらをもって劇中世界には空間のずれが存在すると考える事もできるが、それはさすがに早計だろう。現実的にはたとえば角度や面する方角によって駅の風景が異なって(現実の田無のように、あるいはひばりが丘のように)見え、フジカフェには別の場所に「2号店」があり、メガネのマエダは駅前に2店舗あると考える方が自然だろう。
 つまり、劇中の街は現実の田無周辺をモデルにしつつ位置や形状をシャッフルしていると言える。これは漫画に限らずアニメや、実写作品ですら当たり前に行なわれている事で、おそらく『第三世界の長井』もその例に漏れないだろう。しかし現実の改変がやはり当然のように行なわれるこの作品では、本当にただのご都合主義的表現なのか、一応の疑問符を加えておくべきかもしれない。


コラム:車はどこに行った

 『第三世界の長井』では自動車の交通量が極めて少ない。トラックらしき車がコマの脇を通る様子[1-34]や敷地内に駐車してある描写[2-30]はあるので「自動車のない世界」でない事は確かだが、歩道が境界ブロック等で整備されているケースも少なく大半は歩車道一体で、二車線・路側帯のある道でも実質的に車道が歩道化している場合も多いようだ[1-7]

引用:ながいけん『第三世界の長井(1)』p.7, 小学館, 2013

 この事はEアンカー「設定157 長井はよく車にはねられる」[2-31]がなかなか発現しない事と無関係ではないかもしれない。これが実現するとき、まったく目立たないにしろ世界は大きく変容したのだと言えるだろう。たぶん。